Review:東のエデン

この国の”空気”に戦いを挑んだひとりの男の子と、彼を見守った女の子のたった11日間の物語

 #そういえば小説版あったの今まで忘れてた。。購入したはずだがどこにあるのか分からね

 前回の記事で述べた通り、書いてなかった東のエデン映画版の感想でも。
 ネギま、まおゆう、禁書目録ブリテン・ザ・ハロウィン編とかも絡めて書いていきます。
 以下、公開から結構経っているけど一応格納。


 正直、映画東のエデンはエンタメとしては不十分だったと思う。
 アニメ版ラストのミサイル迎撃に対して、母親探しに尺を取っているし戦いの決着は書斎で終わります。
 それは当然で、”世界の危機”(=この国の”空気”)に立ち向かおうという物語ならば、明確な敵は自然に発生しません。
 このような物語では、ファンタジーの導入で分かりやすいボスキャラを配置しています。ネギまなら完全なる世界だったし、まおゆうでは大主教禁書目録ブリテン・ザ・ハロウィン編(以下、禁書目録)録ではキャーリサでした。TVアニメ東のエデンではミサイルが明確な敵となっています。
 しかし、物語のエンディング、主人公たちの最終目的は敵を倒したその先にあります。ネギまでは魔法世界の救済、まおゆうは人間と魔族の融和です。
 東のエデンに対して他の3作品がエンタメ性を保っているのは、ボスキャラを倒した後はすぐに物語を閉めにかかっているからだと思う。禁書目録なんかは昔からある物語のように「ボスキャラの討伐=世界救済の条件」の等式が成り立っています。
 東のエデンは、エンタメとして最高潮のミサイル迎撃からラストまでかなり間が空いてしまったのが問題です。視聴者がクールダウンするまで十分な時間でした。*1


 東のエデンは映画として面白くなかったが、物語としてはすごく好きなんです。
 やっぱりその理由は、上で挙げた他の3作品の「世界を救う」物語と年代がかぶっていたこともあり楽しめたからです。
 東のエデンは「世界を救う」という命題に対して3ステップで物語を展開しました。


1.物語前日譚 「迂闊な月曜日」
 「迂闊な月曜日」では物部のミサイル攻撃に対して、滝沢朗がニートを動員して攻撃の被害を抑える働きをしました。
 方法としては、ノブレス携帯で何も知らないニートを集めて滝沢の命令に従わせるというものでした。
 テンプレ的には、「元気玉」によるラスボス打倒の物語で、主人公1人のパワー(=悟空)と多くのマンパワー提供者を使って世界を救う方法です。


2.TVアニメ最終話 ミサイル迎撃
 「迂闊な月曜日」で滝沢朗が行った元気玉手法は、古くからある主人公のパワーだけで敵を倒す方法や、主人公が想いを受け取って敵を倒す方法よりも、多くの人が力を合わせている様子を描画できるので効果的です。
 しかし、マンパワー提供者が実際には何もしておらず、元気玉を使える主人公依存な所が大きいのが欠点です。
 そこで、TV最終話で滝沢朗が取った方法は元気玉の先でした。
 実際に敵を倒すために動くのはニートたちで、滝沢朗はニートたちに働きかけ、ニートたちが動いた結果をノブレス携帯で結集させただけです。
 元気玉手法と比べて、名も無き登場人物たちがミサイルを迎撃するために必死に対応策を考え出している様子を描画することができました。


3.劇場版後編 1円の送金
 TVアニメ最終話のミサイルの迎撃に対しては、滝沢1人が敵を打倒するのではなく、集まったニートたちが力を発揮し、滝沢がニートたちを束ねました。
 それでもまだ問題点は残っています。それはノブレス携帯という絶対的な力を滝沢だけが所有しているということです。滝沢はニートたちにミサイル迎撃方法を考えさせ、ノブレス携帯を使って最善の方法を抽出しました。しかし、ノブレス携帯を使えばニートを用いる必要はないはずです。
 禁書目録ではイギリス女王のエリザードが国民に力を分配することで、国民と主人公たちの力を均等にし、国民全員に決断を委ねました。まおゆうやネギまでは主人公たちだけでは世界を救うことができず、モブキャラが力を合わせる、モブキャラに協力を求める必要がありました。
 東のエデンでは前者を方法を取っています。映画のラストで滝沢はノブレス携帯に残った1億円を国民に分配します。
 ノブレス・オブリージュ(持てるものの義務)と作中で言い続けられた通り、ノブレス携帯の力(=1億円)の分配は、責任(=日本救済への参加義務)の分配でもあります。少数のセレソンに未来の決断を丸投げするのではなく、上がりを決め込んだ大人たちをはじめとして国民全員が日本の危機に立ち向かうべきだというメッセージとして見ることができます。


まとめ
 4作品の中で、私が東のエデンが好きな理由は上記で述べた3ステップを踏んだことです。ネギまやまおゆうが魔王を倒す先を描いたように、東のエデンは主人公1人の力で世界を救う物語の先を描きました。
 「世界を救う」物語の面から見れば、既存のテンプレである元気玉を持ち出し一度失敗した上で、責任を分配する方法で皆が救済に参加するように誘導するストーリーラインと読み解くことができる作品です。


 次回:ネギま感想へ続き(?)ます。


 ――ノブレス・オブリージュ。あなたもまた救世主たらんことを切に願います。

*1:劇場版のボスは、滝沢と対極の考えを持つ物部さんなんだけど、盛り上がりにかける