主人公はどこに―サマーウォーズ感想―

 サマーウォーズを観て1週間が経ち、昨日マンガ版1巻を読んだので、サマーウォーズの感想を書いてみる。
 触れる内容はもうすでにどこかで言及されてるだろうけど。

 以下ネタバレ。



 期待してたより微妙だった。それがサマーウォーズを観終えた直後の感想だった。
 エンターテイメントとして見た場合楽しむことができる作品だったのは確かだが、物語として見た場合悲惨な内容に思えたからだ。
 その原因は分かっている。問題だったのは健二が主人公と思える活躍をしなかったことだ。


 サマーウォーズのテーマは映画を観た人なら分かるだろう。
 テーマは「協力することの強さ」「世界を救うためには世界中の人が力を合わせるべき」とそんなところだろう。
 ならば主人公はそのテーマに踏み込んでいくべきではないか。しかし、主人公の健二が見せた活躍と言えば、あらわしが落ちてくるときに暗号を解く活躍をしただけだ。
 テーマに踏み込んでいった人間といえば、おばあちゃんと詫助だろうか。おばあちゃんは、日本が危機的な状況になったときに知り合いに声をかけ、皆をまとめあげた。詫助は、家族に疎まれながらも、(おばあちゃんの死がきっかけではあるが)陣内家に戻ることができた。
 その二人であっても主人公がやるべき活躍――ラブマシーンを打倒するために世界中の人々をまとめる起爆剤となることはなかった。
 唯一そのような活躍をする人間がおばあちゃんであったが、彼女は賢者役であり、あの場面での退場はシナリオに必要なことだった。
 ならば主人公はおばあちゃんの意思を継がなければならない。ラブマシーンがOZの全住人10億のうちの4割を吸収したのならば、残りの6億人が協力して立ち向かうべきだと叫ばなければならない。
 しかし、健二を含め、陣内家の誰も世界中の人々へ向けてメッセージを発信することはなかった。何故か、結束は陣内家の中で閉じこもってしまうことになる。OZに名を轟かせるチャンピオン、自衛隊将校、ラブマシーン開発者と十分世界へ呼びかけを行うことができるメンバーを擁しているにも関わらずだ。
 世界の人々を結束させる起爆剤となったのは名前も顔も分からない一人のネズミのアバターだった。


 上で述べたようにサマーウォーズの残念なところは、テーマに「協力することの強さ」を据えながらも、テーマとシナリオ上必要な行為である世界中の人々を結束させるための行動を誰も起さなかったことにある。(脚本的には目的があるのかもしれないけども、私には思い当らなかった。)
 だから主人公が成長することなく、活躍することもなく、私は見終わった後にすっきりしないものを残すことになってしまった。